山にある集落で、お茶摘みとお茶づくりを体験してきた。
人の気配がほとんど感じられないような集落。
でも、ここは棚田なので、うっそうとした木々に囲まれているというよりは、視界が広がっていて、遠くにある山々が見渡せる。
もちろん周りにはたくさんの木があって、風に吹かれざわざわと耳に心地よい音が聞こえてくる。
どうして、時間は等しく同じなのに、町中にいるときと自然に囲まれた時では、時間の流れが違って感じるんだろう。
お茶づくりにお邪魔したお家のお庭には、樹齢400年のオオシマザクラが存在感を出してどっしりそこにいた。

オオシマザクラの花は、白いんだそう。
なんて立派で、堂々としているんだろう。
この400年の間、どんな景色を見てきたんだろう。
今は数十名が暮らすこの土地も、過去は800人いたらしい。
あぜ道を駆け回る子ども達がたくさんいたんだろうな。
私はこの地がとても好きになった。
さて、お茶摘み。
新芽の3枚くらいをまずは摘んでくる。

お茶の木は、生垣としても使われていたようで、土地の境界や畑の境界にたくさん生えていた。
自生しやすいのだろうか、水やりもなにもしなくても、勝手に育っているみたい。

このお茶の葉を、せっせと集めてたら、次はお茶づくり。
熱した大きな釜で葉に火を通す。


火がまんべんなく通るよう、お茶の葉を手(軍手つけて)でひっくり返したり、混ぜたりする。
その後は、お茶の葉をもむ。
洗濯板を使って、お茶をこするような絞るようような、とにかくお茶の繊維を壊すような作業をした。

それが終わると、お茶の葉を両手のひらですり合わすようにもんでいく。
そこまでできたら、ザルに上げて干す。

少し干したら、またもむ。また干して、もむ。
3回くらいもむそうだ。
家庭では、一回干しっぱなしにして乾燥させたもので良いみたい。
この雄大な景色の中で、お茶づくり。贅沢だな。
5月のこの時期に、一年分のお茶を作るんだそう。

作ったお茶と柏餅でおやつの時間。

お茶は素朴で野性を感じる味。
そこに来ていた子ども達が外で鬼ごっこして遊んでいた。
ここには、おもちゃもゲームもテレビも「ない」。
でも、やっぱり「ある」ものがいっぱいなんだ。
だから子ども達が夢中で遊んでいるんだな。
この景色の中に身を置けていることが嬉しかった。
ここに子どもたちを連れてこられたのが嬉しかった。
子ども達はいつまでたっても帰ろうとしない。
カエルを見つけたり、石壁をよじ登ったり、木登りに挑んでみたり。(あの樹齢400年のオオシマザクラに)
大好きな場所ができた。

ご縁があって、今週はお茶摘み含めて3回もここの来た。
3回目は、ずっと雨だった。
雨で木々が、土が濡れている様子は、とても美しかった。
ずっと見ていられる、というより目が離せないような。
雨の中に走り出していった子どもたち。
町ではそんなことしないのだけれど、この場所の何がそうさせるんだろう。
何か解き放たれるんだろうか。
それを受け止める度量がここにあるんだろう。有り余るほどの度量が。
だから、私もここに来たくなるんだな。
しみじみと私が存在していることを味わいたいんだと思う。
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