私は読書が好きなので、移動図書館をいつも利用しています。
私の住まいは、図書館に通いに行くには不便な場所にあるし、小さい子ども連れだと子どもたちが走り回るので、おちおち読みたい本を選んでいられません。
移動図書館なら、前もって予約をしておけば読みたい本を持ってきてくれるので、その場でのんびり本を選んでいられない私にとっては、とっても便利なサービスです。
移動図書館で来られるスタッフの方は、毎回違うのですが、先日、初めてお目にした中年男性のスタッフがいました。
彼の仕事ぶりは、一言で言うと『ホテルのコンシェルジュ』のようでした。
対応してもらっていると、「〇〇様」と私の名前を呼ばれてびっくりしました。
名前を呼ばれることも珍しい上に「様」までつけられるなんて。
差し出した貸出カードも両手で受け取り、両手で返してくれました。
終始、言葉遣いも所作も丁寧で、徹底的に誠実にお仕事をされていました。
「また2週間後(返却日)、お待ちしております。」
さわやかな笑顔とともに見送られながら、思わずうるっと涙が浮かびました。
ちょっと感動したんです。
なんでこんな気持ちになったのだろう。
それは、彼の仕事の中に、私という接客相手に対する「愛情」を感じたからだと思うのです。
「移動図書館を気持ちよく利用してもらいたい」、という気持ちが見えたからだと思います。
それって、利用者に対する愛情じゃないでしょうか。
相手のことを思いやる気持ちは、根っこに愛情がないと生まれてきません。
ふいに突然、そんな愛情を向けられた私は、涙腺が一瞬ゆるみました。
このコロナ時代、相手と距離を置くのがスタンダートになっているけれど、思いやる気持ちというのは、ダイレクトに伝えることができるんだと、この方に教えてもらいました。
マスクで表情は隠れていても、声色や目線で優しさを伝えることができる。
私は、ほんの短い間のやり取りでしたが、彼の対応で心が温かくなりました。
もし、私が彼と同じ仕事をするようになったら、「彼のように振舞いたい。」とも思いました。
与えられた仕事に対して、意義を確立しているまっすぐな姿はかっこよかったし、自分でアレンジする面白さもあるなと思いました。
しかし、簡単なことではないだろうとも想像できます。
仕事とはいえ、パーソナルな性格と無関係ではできないと思うからです。
仕事になったとたん、急に良い人を演じるというのはある程度できることではあります。
電話に出るときに急に声が変わる、みたいな感じで。
しかし、彼のあの徹底した誠実さを仕事で出すには、やはりパーソナルな部分からにじみ出るものがあるのではないかと思います。
そんなことを思っていると、こんな文章に出会いました。
以下の文章は、kindleのサンプルで読めます。
街 で 仕事 を し て いる 人 を 見かける と「 自分 に あの 仕事 は できる だろ う か」 と、 いつも 何気なく シミュレーション し て しまい ます。 あの 人 も、 この 人 も、 自分 の 場所 で 今日 も 働い て いる。
それ は、 もしか し たら いつか の 私 かも しれ ない。 そう 思っ て 見る と、 どの人の 横顔 も どこ か 誇らしく 見える のは、 越え て き た 昨日 が ある から でしょ う。
ヤマザキマリ (2018-10-08). 仕事にしばられない生き方(小学館新書) (Kindle の位置No.123). 株式会社小学館. Kindle 版.
まさしく、私もこの時、「私にもあの仕事ができるだろうか」という視点を持って彼を見ていました。
すると、想像力が働いて、これは大変そうだな、とか、こんな仕事も派生してあるんだろうな、とか考えることができます。
想像するということは思いやるということに似ています。
つい「それはあなたの仕事なんだからやって当然でしょ」と思ってしまう気持ちが、縮んでいきます。
もし私だったら・・・
そう考えることは、相手に優しくできるだけでなく、自分にも優しくできるようになるはず。
そんなことを、彼の仕事を見て教えてもらいました。
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